いつか、つぶやいた遠藤周作の未発表作品「影に対して」を読み終えました。
この作品、なぜ、遠藤周作は未発表のままにしたのか・・・
など、色々と考えながらの読書でした。
今日は、その色々について、つぶやきます。
母への思慕と自責の念
「影に対して」の存在を知ったのは、NHKの番組でした。
遠藤が、10歳の時、両親が離婚、その後の母への思いや、そこに関係する父への思い。
少し、私自身の人生にも重なるかも・・・・と思ってました。
子供が、両親と言う媒体を通して見る夫婦の姿。(意外と子供は、よく見ているものです。)
サブタイトルは「母をめぐる物語」となっています。
母への思慕と母を救えなかった遠藤の自責の念が、伝わります。
男の子が母親に持つ独特な感情もあると思いますが、やはり、若くして亡くなってしまった母への思いに対しては、私にも重なるのです。
早すぎる別れ、自分が納得できない別れ方をすると、心のどこかで、不完全燃焼のまま、いつまでも、影が残ってしまっているのかも知れません。
遠藤は、それを文章にして、吐き出したかったのかも知れませんね。
砂浜を歩くか、アスファルトを歩くか
私は、kindleを利用するときも、本と同じように、印象的な箇所には、付箋をつけます。
後で、どんな箇所に付箋をつけたのか、自分を見つめる作業につながります。
付箋を貼ったところを、ブログにアップしてみます。
遠藤の母は、厳しく人生を生きる方だったようです。
アスファルトの道は安全だから誰だって歩きます。危険がないから誰だって歩きます。でも、うしろを振り返ってみれば、その安全な道には自分の足あとなんか、一つだって残っていやしない。海の砂浜は歩きにくい。歩きにくいけれど自分の足あとが一つ一つ残っている。そんな人生を母さんはえらびました。
「影に対して」より
この個所を、生き方というより、人生そのものに、重ねて読みました。
意図せず激しい人生を歩むことになった場合、その人生には、自分の足あとがしっかりとついているのかも。。。。
波風の少ない人生、アスファルトの上を歩くように生きやすいけれど、そこには、足あとが何も残らないのかも知れないな。。。。と。
砂浜の足あとのように、人生の足あとが、その人の重みや深みに繋がっているように思うのです。
人生の出来事にもよりますけれど。。。あまりに強烈なものであれば、メンタル的に不調になったりするのですから。やっぱり、複雑ですね。
人生を考える一助になる文章でした。
自然の中に見る、「そこにある、存在感」
55歳になった主人公(遠藤)が、幼い頃に住んでいた大連の町を訪れました。
少年時代に住んでいた煉瓦造りの家は、そのまま。家の前のアカシヤ並木もそのまま残っていました。
主人公も年をとり、アカシヤの樹も年をとったが、この樹は自分とちがって45年間、この場所から一歩も動かなかった。。。。と言う場面があります。
同じ思いを経験したことを思い出しました。
私も、幸せな小学校時代を過ごした町を、一人で歩くことがあります。
50代に入った頃、少し、生きることに疲れたとき、当時の通学路を歩いてみました。
そこには、小学校時代、兄と「急な坂」と呼んでいた勾配の激しい坂道がそのまま、ありました。
その坂を登りきると、大阪湾が一望でき、素晴らしい景色が広がります。
『私はこの40年間、色々なことがあり、その都度、色々と転居を繰り返してきたのに、この坂道はずっと、ここにあったのね。この場所から、一歩も動かなかったのね。』
↑当たり前やけど・・・坂やから。(笑)
けど、なんだか、そのことに、すごく、感動したのです。
何も動じず、(大震災もありました。)そこに堂々と存在しているということに。
人間は、弱いなぁ。色々な出来事に、翻弄されてしまう。
けど、自然は、堂々とあるがままの姿で、そこにある。←わかってもらえます?
いやぁ、この感覚。。。
自分だけかと思っていたけれど、遠藤周作もなんだか同じ思いをしていたんだと。
このときの遠藤の思い、なんだか、そのまま、私の腑にストーンと入ってきました。
読書の意味を再発見
読書の効果をあまり、考えたりしなかったけれど、
こうやって、ブログにアップしようと思うと、印象的なところを忘れないように付箋をはります。
今までは、貼っただけで終わっていたけれど、今回は、どんな箇所のどんなところが印象的だったのか。
そして、それについて、自分はどう思ったのか。。。。
本を読むことは、自分を見つめ、深める(・・・私が、深まったかは、知らんけど・・・ 笑)
新聞の「折々のことば」に、
経験でしかものを言えなくなる人生は、寂しい。
本は人の視野の狭さを、歪みを教えてくれる。
折々のことば 「読書遍歴を語る 通訳者・翻訳者の本棚 田口俊樹『通訳翻訳WEB』」から
これからも読書を続けていきたいものです。
『人生をまるごと抱きしめろ』
そう言えば、この本の最後に遠藤周作の言葉が紹介されていました。
解説者、朝井まかてさんが大好きな言葉だそうです。
『人生をまるごと抱きしめろ。』
この解説ページにも付箋!
人生にも色々あって、とてもじゃないけれど、受け留められない人生も、あるかも知れません。
だって、自分の思い通りにならない人生も、きっと、あるはず。
そんな人生を「愛せ!」でもなく、「受け留めよ!」でもなく、「抱きしめろ」。
悲惨な人生であっても、「自分の人生を抱きしめろ」
なんだか、いい言葉だなぁ。
私は、遠藤周作のこの言葉が載っている「人生の踏絵」は読んでいません。
なので、解釈が違っているかも知れません。
ぜひ、また読んでみたいと思いました。
(次々、読みたい本が広がります😊)
私も自分の人生をそっと抱きしめてみたい。。。。そう思って、kindleを読み終えました。
今日も、最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。では、また。
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