あれから78年・・・。
あれからと書いたけれど、私が生まれるずっと前だった夏。
昭和20年にも、夏が・・・それぞれの夏がありました。
梯久美子という作家
いつ頃読んだ本でしょうか。
本棚に2冊の文庫本が並んでいます。
1冊は、『昭和20年夏、僕は兵士だった』
もう1冊は、『昭和20年夏、女たちの戦争』
いずれも、著者は、梯久美子。
1961年生まれのノンフィクション作家です。
デビュー作『散るぞ悲しき』で、2005年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
『散るぞ悲しき』は、まだ読んでなかったので、今回、読みたいリストに、入れました。
戦後生まれの女性が、戦争に焦点を当てて書かれた2作。
今日は、その1冊、『昭和二十年夏、僕は兵士だった』について、つぶやいてみます。
『昭和20年夏、僕は兵士だった』 5人の戦争、そして戦後
廃墟の中から新しい日本を作ったのは、かれら若い兵士だった世代である。敗戦国の兵士たちが、戦後を生きるとはどういうことだったのか、戦争の記憶は、かれらの中に、どのような形で存在し、その後の人生にどう影響を与えてきたのだろうか。
『昭和二十年夏、僕は兵士だった』まえがきより
俳人・金子 兜太、考古学者・大塚初重、俳優・三国廉太郎、漫画家・水木しげる、建築家・池田武邦
戦後を生き抜いた5名、戦後の日本を代表する著名人たち。
彼らへのインタビューにより、本は展開されていきます。
彼らが戦時中、何を体験し、そして、その体験をもとに、その後、どう生きたのか。
戦争を知らない私は、引き寄せられるように読んだ記憶があります。
「残生」を生きる。
5人とも、青春時代に戦争を経験、20代で死と向き合ってこられた方々です。
語られる言葉に重み。。。深みを感じずにはいられません。
私は、平和な時代を65年以上生きてきました。
その間、愛する人との別れにより、「生死」をみつめてきました。
ですが、平和の中で、自分自身の死を目前に感じた経験がありません。今のところ。
青春時代に、自分の死を実感し、そして、必死に生き抜いた若者たちがいます。
彼らは語ります。
死んでいった仲間。残された自分。
自分ではなく、何故、彼だったのか。
生き残った罪悪感と使命感。
本の中で、金子氏は、戦後の自身の人生を「残生」と呼ばれています。
「余生」ではなく「残生」
余生は、諦めのようなニュアンスが含まれるけれど、残生は、アクティブに、前向きに死者に報いるという意味があると語られています。
意に反して、自分の生を断ち切られていった仲間に報いる。
そのために、前向きに生きたいと。
死者の視線にさらされて生きる人生
以前にブログに書きましたが、ホスピスで、私も戦争を生き抜かれた方の話を聴かせて頂いたことがあります。
これまで、戦争の話を口にすることができなかったと。
「死を前にして、初めて語ってみようと思った」と言われました。
語ることができないほど、壮絶な戦争を生き抜かれてきたのでしょう。
この本の中で、考古学者・大塚初重氏が、語られます。
「わたしは、人を殺したんです」
自分が生き残るために、必死だったと。自分の本能がそうさせたと。
平和な時代であれば、人を殺すことは、なかっただろう大塚氏。
大塚氏の話を聞き、著者である梯氏は「死者の視線にさらされて生きる人生がある。それを静かに受け入れ、できる限り誠実に生きた人がいる。」と書かれています。
大塚氏のように、意に反して、自分自身の本能により、人を殺めてしまった若き軍人たち。
生涯に渡り、生きる重みを、痛烈に実感していた人は、たくさんおられるはず。
戦争のむごさ、そして、戦争に向けて突き進んでしまった世の中。
そこに怒りを覚えてしまいます。
なんのための戦争なのか。こんな風に人を追い込んで、何をしたいのか。
ため息しかでません。
悲壮感のない言葉の裏に
今、こうして本をペラペラとめくっていると、
重みのある言葉がこの本の中に、たくさん、出てきます。
例えば、水木しげる氏は語ります。
「人間は、ただ幸せに生きればいい」
私もそう思うけれど・・・。
幸せに生きること・・・結構、難しかったりする人生もあります。
「人はみな、自分で生きていると思っているけれど、自然から、許されて存在している」
自然から許されて存在している私達。
今の私達を自然は許してくれるのかな。
水木氏の性格にもよるけれど、氏の語りには、ユーモアがあり、悲壮感が漂っていません。
けれど、逆に、そこが、ビンビンと私の胸を打つのです。
戦争で、たくさんの生と死と向き合った人だからこそ、ユーモアを持って語れる悲壮感。
当時の若者が経験した、昭和20年の夏。
そこには、どんな青春があったのか、よかったら、覗いてみてください。
そうそう、水木しげる氏の『総員玉砕せよ!』もお勧めです。
今日は、8月15日。
そして、昭和二十年にも確かに、暑い夏がありました。
今日は、今までに読んだ本の中の1冊について、つぶやきました。
最後まで、お付き合い下さってありがとうございました。
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