良い本と出会えた・・・素直にそんな感想を持てました。
『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』内田也哉子著。
ご両親を相次いで亡くされた内田也哉子さん。
ぽっかり空いたこころの空間を人との出会い、一人旅を通して、満たそうとされました。
生きること、死ぬことなど、その折々、感じた心模様を綴られています。
kindle(電子書籍)でも、お気に入りの箇所に「付箋」を貼ることができます。
今日は、私が貼った付箋を辿ってみました。
💙 母(樹木希林さん)を失って
人が死んで、生活から消えて、遺された者がまた何事もなかったように日常に戻っていく。当然のことだが、時々、この滑稽な人生が無性に耐えられなくなる。・・・感情という煩わしいものを持つ以上、それをどう消化すればいいいのだろう・・・
💙 谷川俊太郎さんの言葉より
死というものがないと、生きることは完結しないんです。僕は死んだあとが楽しみ。・・・たとえ、身体は死んでも、魂は残ると、アタマではとらえず、自然が神だとハダで感じる。・・・歳をとると無理せずとも、自然と調和してきた。
💙 中野信子さんとの対話より
水を流すと溜まるべきところに溜まるでしょ。そういう生き方を目指すべきなのではないかと思うのね。・・・自分の意志で水を止めたり、無理のあるところに溜めようとしたりしても、あまりいいことが起きないような気がする。
💙 養老孟子さんのページより
相模原障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件について、重い障害があって動けない人たちには生きる意味がないと、犯人は言ってのけた。犯人の言葉の裏には、すべてのものには、意味がなければならないという暗黙の了解を持つ社会がある。世の中のものは役に立たないものだらけ。でも、その存在は、確かに必要・・・
💙 Driving Alone(一人旅)より
私の大好きな海は、眺めたり、波音に耳を傾けるだけでも、波のおおらかなリズムに自然と呼吸が整うらしい。これまで辛い時こそ海に癒されてきたのも納得がいく。
「人間は、当たり前にみんな孤独」と母はよく言った。誰がそばに居ようと、生まれてから死ぬまでひとりなんだと、その覚悟さえあれば、誰かとの時間をもっと繊細に、鮮やかに感じることができる。
一体、私たち人間は、どこで人のものを奪い、命を壊していいものと勘違いしてしまうのだろう。・・・済んでしまった戦争も、これから起こり得る戦いも、他人事ではなく、自分事のように捉え、感じ、考え、願いたい。
ひとりでいる時にこそ思い浮かんでくる誰かの存在が自分というひとりを強くしてくれる。
ふと、目の前に、一羽のクロアゲハがひらひらと現れ、まるで車を先導するように舞っている。けれど、トンネルに入った瞬間、消えてしまった・・・もうじき、母の二度目の命日がやってくる。
💙 写真家、石内都さんと・・・遺品について
亡き母の遺品を撮影されている石内さん。本人はこの世にいないので身につけていたものたちと対話。ものは動かず、ただそこにあるだけ。私がどういう風に思い込むか、こっち側の問題。
遺品の処分は、他人が決めたタイミングじゃなくて、自分の中で「今だ」っていうのがあるんです。
💙 窪島誠一郎さんと 長野県上田市:無言館にて
窪島誠一郎さん:第二次世界大戦で亡くなった画学生たちの遺した絵画、彫像、遺品の絵具、ハガキなどが展示されている戦没画学生慰霊美術館「無言館」創設者、館長
ご自身が好きだった作家「水上勉」が実の父親だと知る。36歳で、水上勉氏と再会。
「寂しさは宝だと思います」
💙 伊藤比呂美さんとお経を語る
雨はどんな木にも等しく降り注ぎ、木々はそれぞれの花を咲かせたり実を実らせる。法華経:薬草喩品より
ひとつの雲が降らす雨、(それぞれ)その種の成分や性質にあわせて、受け取って伸びる。…
一つの雨がうるおし、(受け取る側の)成分や性質にあわせて、一つ一つちがうものをもたらす。如来というのはまぎれもなくこのとおり。
💙 横尾忠則さんとの対話
大自然は図らずともそれなりに調和がとれていて、人はなるべく知識や考えに頼らず、自然にあるがままに生きるのがいい。
「しゃーないやんけ、なるようになる」 なんと安堵を覚える響きだこと!
💙 あとがきより
心がカオスの状態の時ほど、私は書くことで、なんとか平静を保ってこれたのかもしれない。
書くことはちょっとした日常からの逃避行のようで、しっかりと空想の世界を飛び回れば、戻ってきてまた現実世界に根を張れた。
初めて会う人とも得てして、心の引き出しに仕舞われたものを探し当てるように、生きること、死ぬこと、人との関わり、子である自分が大人になる道のりについて語らうことが軸となった。
もう一方で打ち寄せたのは、沈黙の心地よさだった。言葉と言葉の間に佇む静けさ。それぞれの思いが熟成されるような間。
誰かの不在に傷を負った私は、いつしか誰かの存在に癒され、また歩き出している。
(BLANK PAGE―空っぽを満たす旅より)
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たくさんの宝石のように輝く言葉の中から、選んでみました。
年齢も文章力も違いすぎるけれど、私の思いが詰まっている本でした。
共通点は、少し個性的な母親を持つ娘、そしてその母との別れと思い・・・
何よりも、大切な人を亡くしたこと。
他にも、坂本龍一さんや鏡リュウジさん、是枝監督などたくさんの方との対談が文字となっています。
付箋は、他にも、たくさん貼ったけれど、ブログには一部だけ載せてみました。
私が今までにブログで綴った心模様と重なる部分が多く、考え方、感じ方が似ているなぁ・・・。
夫との死別後、辛かった時、故郷の海で癒されたこと、母との死別後、下校時に蝶々が現れ、私の周りを離れなかったこと、大いなる自然の中にいると、自分が取り戻せたことなどなど。
同じような経験や、似たような感性を持たれていると(勝手に)思いました。
母との別れ方や、死別の時期など、異なる部分も多く、もちろん、悲嘆に関しては、個別的なものだと思っています。
だけれど、也哉子さんの文章を読んでいると、愛する人との死別には、普遍的な感情も、あるんだなと改めて思いました。
長野県にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」に行ってみたくなったり、伊藤比呂美さんの『いつか死ぬ、それまで生きる、私のお経』を読んでみたくなりました。鏡リュウジさんの占いにも興味が出たし。
一冊の本が、また、新たな出会いに導いてくれました。
そして、今月末には、自然の中に身をおこうと、一人旅を計画しています。
一人旅というのは、自分との対話を深めるものだと確信しました。
自分と、そして、これまで出会った、今は亡き愛する人とも、対話をしてこよう!
方向音痴の私やけど、ひとりで、頑張ってみます(笑)
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