先週、私にとって思い出深い方の訃報が、また一人、届きました。
脚本家の山田太一さんです。
私の人生前半、大切な母の死を経験した前後、山田さんのドラマがテレビで放映されていました。
「それぞれの秋」そして、「岸辺のアルバム」
お母さん役の久我良子さんと八千草かおるさんが、母の姿と重なります。
当時の我が家も愛情たっぷりの、父母兄、そして私の4人家族でした。
ところが、色々と歯車が狂い出した時期に、山田太一さんのドラマが放映されました。
「岸辺のアルバム」の最後のシーン。
多摩川の氾濫で幸せの象徴だったマイホームが流されていくシーン。
ジャニス・イアンの「ウィル・ユー・ダンス」の曲とともに、今でも心の中で再現されます。
「確かなものなど、何もない」・・・自分の人生と重ねて、そんな風に感じたことを思い出しました。
どんなに一生懸命生きていたとしても、どんなに幸せな生活を送っていたとしても、
人生の歯車が狂っていく事ってあるのです。
この二つのドラマは、若き日、次々と困難にぶつかった私に、ピッタリの作品だったのです。
その後、時は流れました。
ある日、本屋さんで山田太一氏の文庫本のタイトルに目がとまりました。
「生きるかなしみ」
1995年刊行となっているので、ドラマを観ていた時期から、ずいぶん、時が経過していたのだと思います。
実際に手に取ったのがいつ頃だったのか、記憶が曖昧です。
結婚をしていた時期だったのか? それとも愛する夫と死別後に出会った本なのか・・・
ただ、タイトルの「生きるかなしみ」と言う言葉に惹きつけられて、手に取ったことを覚えています。
どんな人生も生きていくには、かなしみを伴うものなんだと。
このタイトルは、私にそっと語りかけてくれたのです。
本の内容は、ほとんど覚えていないのですが、このタイトルは、人生の大切なキーワードとして残っています
いのちの儚さ、自分の無力感、人生には、どうしようもない、抗えない運命というものがある・・・
そんな事を、このタイトルは、私に改めて、語りかけてくれたのです。
山田太一さんの訃報が届き、私の人生で出会った大切なことば、「生きるかなしみ」を昭和のドラマと共に思い出しました。
山田太一さんのご冥福を心より、お祈りします。
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