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☆ホスピスで出会ったAさん

メメントモリ
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今日は、仕事を休んでいます。

体調が悪いのではなく、休日出勤の振替です。

シニアになっても、働けている毎日に感謝です。

長い間、仕事をしてきましたが、50代のころは、並行してボランティア活動もしていました。

自死遺族会とホスピス、一般病棟での傾聴です。

たくさんの方との出会いがありました。

今日は、ホスピスで出会った患者のひとり、Aさんの思い出を書いてみようと思います。

ホスピスでの傾聴

毎月、仕事を調整して、月間計画をたて、ホスピスで傾聴ボランティアをしていました。

早退を許してくれた当時の上司には、感謝しています。

自分が今している勉強、これからのやりたいことを語って、許可をとったのですが、

今から思い出すと、感謝の気持ちが改めて、こみあげてきます。

ホスピスで傾聴するときは、自分自身が、心身ともに良好状態、

できるだけ真っ白な気持ちでと心掛けていました。

そうでないと、自分の今の状態に引っ張られてしまい、まっすぐ傾聴できないのです。

ホスピス病棟に行くと、傾聴を希望されている患者さんのお名前と病室を看護師さんから聞きます。

初めてお会いするときは、入室前には、私も緊張が走ります。

「今日は、○○室のAさんがお話をしたいとおっしゃってます。70代の、元お医者様です。」

その日もそれだけの情報を得て、病室に向かいました。

優しそうで、上品な雰囲気のAさんです。

子どもの頃、特に小学生時代は、ヤンチャで先生に叱られたと言う話から始まり、

敗戦当時のこと、そして、医者になってからの苦労話、エピソードを次々と話してくださいました。

小学生時代の話をされるときは、本当に嬉しそうに、楽しそうに語られました。

まるで子供時代にもどったような笑顔です。

その後、敗戦当時、焼け野原になっている町の話、

医者になってからのいくつかのエピソードをお聞きしていました。

ある程度の時間が経過、看護師さんから、処置のための声がかかりました。

私には、「次」がないのです。

処置の間、私は、病室の外にでます。継続していたお話が途切れる状態となります。

楽しそうに話されていましたが、体調は大丈夫かな?と私も心配に。

このタイミングで、声掛けをさせて頂きました。

「あまり長時間になると、お身体にさわりませんか?

今日は、これくらいにして、また次回にお話し聴かせて頂きましょうか?」と。

Aさんは、私を見つめながら、ゆっくりと、

「私に『次』は、ないのです。」とAさん。

ドキッとしました。次回があると思い込んでいた私。

死を目の前にしている患者さんには、「いまここ」が全てだと。

あたりまえのことなのに。Aさんから聞かされて、あらためて気づいた私。

看護師さんの退室後もAさんの話は続きました。

医師時代にお世話になった先生の事、患者さんの事、医療の専門分野を変更したこと。

傾聴をしていて感じたことですが、男性はご自身の仕事のことを話題にされることが多い印象です。

昭和の時代を生きてこられたからでしょうか。時代を反映しているように思います。

ある程度、お話を聴かせて頂いたあと、私は、Aさんに、

「Aさん、医者という仕事を選んだ人生、Aさんにとって、いかがでしたか?」と質問をしてみました。

「満足です!」

少し大きな声で、きっぱりと言い切られました。

しっかりとご自身の人生に「満足」と言われたAさん。

何とも言えない、感動が私を包みました。

人生を振り返る

当時の状況が、今でも目に浮かびます。

少し背中をあげたベッドに横たわり、真正面の壁を見つめて、ゆっくりと話されるAさん。

病室の白い壁、まるでAさんの人生を映すスクリーンのよう。

ベッドサイドに座り、そのAさんを見つめて、お話を聴く私。

静かな、穏やかな、そして荘厳な時間でした。

私はただ、横に座っているだけ。それだけです。

聴く人が居て、初めて、語ることができるのだと、改めて思いました。

人生を振り返ることができる、貴重な時間。

そんな時間を共にさせて頂いて、有難かったなと今でも思います。

ホスピスで出会ったなかで、忘れられない方のひとり、Aさん。

今、どうされているのかな? ← と、思ってしまう私です。

今日は、Aさんと共にした時間。そのときのことを、思い出してつぶやいてみました。では。

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